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ファンダメンタルズ バザール2025開催報告

  • ファンダメンタルズ プログラム運営
  • 22 時間前
  • 読了時間: 21分

2025年6月21日(土)・22日(日)の二日間、4回目となるファンダメンタルズ バザールを山口情報芸術センター(YCAM)で開催した。2025年度からの3年間は山口県を中心とした中国エリアへ拠点を移し、地域住民との連携手法の開発・仕組み化を目指す中での初開催となる。

翌9月8日(月)から9月30日(火)の23日間、記録映像6本を軸にオンラインホワイトボード・Zoom・YouTubeライブを組み合わせたオンライン一般公開を実施した。


目次

  1. 実施目的

  2. 実施概要

    • 2-a. 参加者

    • 2-b. タイムライン

    • 2-c. コーディネートの手法

    • 2-d. 実施内容

  3. 実施結果

  4. 課題

  5. 参考リンク

1. 実施目的

  1. 様々な分野の科学者とアーティストに、この協働プログラムに参加することで、当面はわからない、辿り着けないこと(普遍)を希求する機会を提供します。

  2. この、個人を基盤に置いた科学とアートを"普遍"を通じてつなぐ試みを広く一般に開くことにより、科学とアートと社会を新たに繋ぎなおします。

上記の実験により、新たな文化が生まれてくることを期待します。

  1. 上記の実験のための汎用的な仕組みを実践的に生成、広く共有していきます。

    • 科学者とアーティストのペアリングについての指標

    • 科学者とアーティストの交流モデル

    • 科学者とアーティストの交流プラットフォームの形成、コミュニティの形成

    • 科学者・アーティスト・社会の交流モデル

加えて2025年度からは、FY2025–2027の3年間を山口県を中心とした中国エリアでの展開期間と位置づけ、個人を基盤に置いた科学とアートの対話を地域に開くことで、科学・アート・社会の新たな繋ぎなおしを具体的に試みる。

2. 実施概要


2-a. 参加者

科学者とアーティストは一般公募で参加者を募った。

科学者は、

  • 一ノ瀬俊明(都市環境学、国立環境研究所 社会システム領域 シニア研究員)

  • 北川智利(心理学、立命館大学 BKC社系研究機構 招聘研究教員)

  • 坂井伸之(宇宙物理学・スポーツ物理学、山口大学 創成科学研究科 教授)

  • 杉井学(情報生物学、山口大学 国際総合科学部 教授)

  • 堀川裕加(物理化学、山口大学 創成科学研究科 准教授)

  • 堀部和也(生物科学、理化学研究所 基礎科学特別研究員)

の6名。

アーティストは、

  • 岩泉慧(絵画)

  • 小畑亮平(インスタレーション)

  • 角田優(彫刻/インスタレーション)

  • 椛田有理(絵画/インスタレーション)

  • 木内祐子(インスタレーション)

  • 菊池遼(絵画)

  • 小宮太郎(インスタレーション)

  • 長島勇太(アーカイブプロジェクト/インスタレーション)

  • 野口桃江(実験音楽/インスタレーション)

  • 三塚新司(美術家)

  • 三瓶玲奈(絵画)

  • 宮内由梨(インスタレーション)※DAY2欠席

  • メランカオリ(占い/インスタレーション)

の13名。今年度は定員を上回る応募をいただいたため、応募者全員による相互推薦会「互薦会」を開催し、得票の多かった13名が参加することとなった。

哲学研究者は、

  • 石井雅巳(フランス哲学、山口大学 講師)

  • 池松辰男(ドイツ哲学、島根大学 教育学部社会科教育専攻 講師)

  • 高木駿(美学、北九州市立大学 基盤教育センター 准教授)

の3名。地域性を考慮し、中国・九州エリアを中心に科学とアートの対話を媒介できる研究者を隣接部会がコーディネートした。


2-b. タイムライン

  • 2025年3月:公募

  • 2025年4月:互薦会の開催、参加アーティスト13名の確定。面談・参加者説明会の実施。「ファンダメンタルズ ルーム April/ラボ」開催

  • 2025年5月:「ファンダメンタルズ ルーム May/ラボ」開催

  • 2025年6月4日:「ファンダメンタルズ バザール2025」Webページを公開

  • 2025年6月6日:一般来場者説明会(山口大学 生協FAVO内多目的ルーム/オンライン)

  • 2025年6月12日・15日:一般来場者説明会(YCAM/オンライン)

  • 2025年6月14日:パートナー候補の通知

  • 2025年6月21日(土)・22日(日):「ファンダメンタルズ バザール2025」 開催(YCAM)

  • 2025年7月:面談・参加者説明会の実施。「ファンダメンタルズ パーク 夏/ラボ」開催

  • 2025年8月:28日インタビュー動画の公開開始。「ファンダメンタルズ ルーム August/ラボ」開催。

  • 2025年9月8日(月)〜9月30日(火):バザール2025 オンライン一般公開開催


2-c. コーディネートの手法

  • 互薦会

    アーティストの応募者が定員を大きく上回ったため、応募者全員が参加する相互推薦会「互薦会」を実施した。参加希望者が自身の活動を互いに紹介し合い、共に活動したい相手を推薦するという形式で、最終的に得票の多かった13名がバザールへの参加者として確定した。今年度で2回目の試みとなるが、参加者の満足度は非常に高かった。

  • パートナー候補の推薦

    隣接部会が全参加者に面談を実施し、応募動機・参加目的・これまでの活動について確認した。面談内容および指標(対象の傾向と仕事の仕方)をもとに各参加者のパートナー候補を推薦し、バザール開催前に通知した。


2-d. 実施内容


2-d-i. 前回(2023年)からの変更点

  • 開催地の移転:2021年から3年間東京で開催してきたバザールを、2025年度から山口情報芸術センター(YCAM)へ移した。一般公開の会場となったYCAMのホワイエは、多様な目的でYCAMを訪れる来館者が自然に行き交うオープンな空間であり、専門家同士の対話に、地域在住・在学者をはじめとする多様な人々の視点が交差する、文字通りの「バザール」が実現した。

  • チョークトークの刷新:科学者とアーティストの発表時間を同じに設定し、全員が一つの場に集まる形とした。

  • インタビューとチョークトークの内容を統一:youtubeに公開するインタビューの内容をチョークトークと統一し、チョークトークの内容をコンパクトにまとめたものとした。

  • オンライン一般公開の刷新:過去3年間は記録映像の期間限定配信にとどまっていた一般公開を、miro(オンラインホワイトボード)・Zoom・YouTubeライブを組み合わせた参加型の形式へと刷新した。


2-d-ii. 会場

会場は山口情報芸術センター(YCAM)。情報技術と芸術表現の融合を基盤に地域に根ざした活動を展開する施設であり、ホール・スタジオ・ライブラリー・映画館など多様な空間を持つ。バザールはスタジオB(DAY1)およびロビーを含むオープンスペース(DAY2)を使用し、来場者が自由に立ち寄ることのできる開かれた環境で実施した。


2-d-iii. 参加者総覧

21名の科学者・アーティストがヴィジュアル1点を用いて自身の営みを説明する参加者総覧を作成した。バザール開催に先立ち、テキストとビジュアルを通じた交流を行った。


2-d-iv. DAY1:発表・質疑(チョークトーク)

1日目は非公開で開催した。参加者全員が、ビジュアル使用を原則1枚に限定した「チョークトーク」形式で発表を行った(科学者:20分発表+10分質疑、アーティスト:15分発表+10分質疑)。紙とペンのみを基本とするこの形式は、前提を共有しない他者に自身の営みを根本から言語化する試みであり、発表者と聴衆の双方に互いの活動への理解をもたらした。


2-d-v. DAY2:他者を介した交流(島1〜2)

哲学研究者がモデレーターを務める90分間の公開セッションを6組実施した。事前の打ち合わせや台本なく、科学者・アーティスト・哲学研究者の三者が初対面の状態で対話に臨む形式で、会場に来場した一般の方も自由に参加・質問できた。セッションは以下の通り。

午前の部(10:15〜11:45)

  • セッション1:堀川裕加(物理化学)× 椛田有理(絵画/インスタレーション)× 池松辰男(ドイツ哲学)

  • セッション2:野口桃江(実験音楽/インスタレーション)× 北川智利(心理学)× 石井雅巳(フランス哲学)

午後の部(12:45〜14:15)

  • セッション3:三塚新司(美術家)× 杉井学(情報生物学)× 高木駿(美学)

  • セッション4:岩泉慧(絵画)× 一ノ瀬俊明(都市環境学)× 石井雅巳(フランス哲学)

終わりの部(14:30〜16:00)

  • セッション5:木内祐子(インスタレーション)× 堀部和也(生物科学)× 高木駿(美学)

  • セッション6:小宮太郎(インスタレーション)× 坂井伸之(宇宙物理学・スポーツ物理学)× 池松辰男(ドイツ哲学)


2-d-vi. DAY2:1対1の交流(島3〜6)

パートナー候補として事前に通知された組み合わせで、科学者とアーティストが1対1で40〜45分間の直接交流を行った。DAY1の発表で得た相互理解をもとに、より具体的・直接的な対話が展開された。


2-d-vii. DAY2:自由交流

全プログラム終了後、参加者全員が自由に話せる時間を設けた。プログラム中に話しきれなかった相手との対話や、複数人での自由な交流が行われた。


2-d-viii. 一般公開(DAY2 現地)

DAY2の「他者を介した交流」は、YCAMの開かれた空間を活かして一般来場者にも公開した。地域住民・大学生・高校生など多様な方が立ち寄り、質問を投げかけるシーンもみられた。


2-d-ix. オンライン一般公開(9/8〜9/30)

DAY2の6セッションの記録映像を起点に、3週間にわたるオンライン一般公開を実施した。「観るだけでなく参加するイベント」をコンセプトに、以下の4形式を組み合わせた。

① 参加者インタビュー動画の公開(8/28〜)

オンライン一般公開の開始に合わせ、参加科学者・アーティストそれぞれへのインタビュー動画をYouTubeで公開した。一般視聴者が対話記録映像を見る前に各参加者の人となりや活動を知ることができるよう、導線として機能することを意図した。

② 6つの公開クリップ(9/8〜9/30)

バザールで行われた科学者・アーティスト・哲学研究者の対話記録映像を期間中いつでも視聴可能な形で公開した。

② miroでの視点交換(24時間、期間中)

オンラインホワイトボード「miro」を常時開放し、動画を見て感じたこと・疑問・連想などを自由に書き込める場を設けた。科学者・アーティストも訪れ、書き込みに応答した。「科学者・アーティスト集まるタイム」として、参加者が集まりリアルタイムで応答する時間を3回(9/15・9/21・9/28)設けた。

③ ゆるトークルーム(9/15、Zoom)

参加者が普段行っているトークルームに一般視聴者が混ざる60分間のセッション。少人数に分かれ、「不可視の探求と可視化」「東洋思想と美意識」「意識と認識」をテーマに自由に語り合った。

④ ゆるビューイング(9/16、Zoom)

参加者全員でその場で選んだ対話クリップを一緒に視聴し、感想や質問を共有する110分間のセッション。アーティスト本人も参加した。

⑤ ゆるラジオ(9/21・9/28、YouTubeライブ)

miroに書き込まれたコメント・質問に科学者・アーティストがライブで応答するラジオ形式のプログラム。2回にわたって実施し、延べ8名の参加者が登壇した。


3. 実施結果


3-a. ペア・ユニット形成

バザール終了後のアンケートで参加者に第2希望までパートナー希望を尋ねた。希望をもとに、最終的に10ペア・4ユニットが形成された。過去のバザールと比べ、複数の科学者が複数のアーティストとペアを結んだこと、およびユニット形式での参加が増えたことが2025年度の特徴である。

ユニット形成後、ユニット側の意向を踏まえ、バザール参加者および既存プログラム参加者にもユニット参加者を募った。

形成ペア(10組)

  • 北川智利(心理学)× 菊池遼(絵画)

  • 北川智利(心理学)× 小宮太郎(インスタレーション)

  • 北川智利(心理学)× 野口桃江(実験音楽/インスタレーション)

  • 坂井伸之(宇宙物理学・スポーツ物理学)× 木内祐子(インスタレーション)

  • 坂井伸之(宇宙物理学・スポーツ物理学)× 小宮太郎(インスタレーション)

  • 坂井伸之(宇宙物理学・スポーツ物理学)× メランカオリ(占い/インスタレーション)

  • 坂井伸之(宇宙物理学・スポーツ物理学)× 長島勇太(アーカイブプロジェクト/インスタレーション)

  • 杉井学(情報生物学)× 長島勇太(アーカイブプロジェクト/インスタレーション)

  • 堀川裕加(物理化学)× 椛田有理(絵画/インスタレーション)

  • 堀部和也(生物科学)× 三塚新司(美術家)

形成ユニット(4組)

  • 物理化学ユニット:堀川裕加(物理化学)+ 小畑亮平 + 角田優 + 黒沼真由美 + コイズミアヤ + 平山好哉 + 三瓶玲奈

  • 環世界ユニット:杉井学(情報生物学)+ 安里槙 + 岩泉慧 + 小畑亮平 + 木内祐子 + 三瓶玲奈 + メランカオリ + 椛田有理

  • 観測データユニット:一ノ瀬俊明(都市環境学)+ 角田優 + 岩泉慧

  • 堀部ユニット:堀部和也(生物科学)+ 菊池遼 + 野口桃江


3-b. 参加したファンダメンタルズからのフィードバック(n=21)


3-b-i. 概要(満足度)

プログラム

とても満足

満足

普通

やや不満

満足計

バザール全体

70%

25%

5%

95%

DAY1 発表・質疑

63%

37%

100%

DAY2 他者を介した交流

53%

26%

16%

5%

79%

DAY2 1対1の交流

59%

24%

12%

6%

82%

自由交流

32%

42%

26%

74%

パートナー候補の組み合わせ

39%

39%

17%

6%

78%

バザール全体の満足度は95%が満足(「とても満足」70%・「満足」25%)、5%が普通で、不満はなかった。プログラム別では「DAY1 発表・質疑」が100%満足と最も高く、「他者を介した交流」「1対1の交流」「自由交流」の順に続いた。


3-b-ii. 全体

プログラム全体の趣旨と体験への肯定的な声が多数寄せられた。

「非常に刺激的で有意義な時間でした。日ごろなかなか叶わない濃密な話ができ、定期的にこのような機会があるととても嬉しく思います。」(アーティスト)
「普段専門領域や研究分野が異なる人たちと話すことはとても刺激的でした。また、自分が話すだけでなく他の人達の会話を聞くことも刺激になりました。あっという間の2日でしたが同じ場所で濃い時間を過ごしたことで合宿感もあり楽しかったです。」(アーティスト)
「好奇心旺盛な方々が集まっている印象で、交流がやりやすかったです。関係者に、次回から応募するように薦めたいと思いました。」(科学者)

科学者・アーティスト・哲学研究者の三者が交わることの意義も言及された。

「科学者の方からのみではなく、美術家の方、哲学者の方との交流もとても意義深く、とくに哲学者の方との交流が今回のみだということが残念に思われるほどです。」(アーティスト)
「サイエンスに興味がある美術家、というジャンルの作家がこれだけの人数集まって話をしたことがなかったことに気が付きました。新しい経験でした。」(アーティスト)

山口開催ならではの体験への言及もみられた。

「遠かったですが、それも含めて普段の制作活動からの気分転換にもなり、また運営がとても行き届いていて素晴らしい経験をさせて頂きました。」(アーティスト)
「YCAMの場所のもつ力も相まって参加されたみなさんの熱を感じました。」(アーティスト)

課題としては、2日間のスケジュールの体力的な負荷、より多くの時間・交流機会への希望が複数から挙がった。

「スケジュールに体力がなんとか追いついたくらいなので、もう少しゆるやかな時間設計だったら、さらに有難く思います。」(アーティスト)
「なにぶん人数が多いので致し方ないところはありますが、もう一日ぐらい時間に余裕があると、色々やれることも余裕も増えるのではないか、と思います。」(哲学研究者)

3-b-iii. DAY1 発表・質疑(チョークトーク)

100%が満足と、全プログラム中最も高い評価となった。

チョークトーク形式については、普段言語化しない部分を可視化する機会として肯定的に評価された。

「自らの興味の対象や研究のやり方などを、振り返ってまとめることができました。これまで、このようなことはほとんどしたことがありませんでした。また、美術家の方々の作品の裏のこれまで知らなかった思考を知ることができて大変興味深かったです。」(科学者)
「美術家、科学者、哲学者と全く異なる分野の専門家の集まりであるにもかかわらず、不思議と内容に乖離が少ないように感じられ、本当に物事の本質の追究が根幹にあると実感しました。」(アーティスト)

一方で、形式への不慣れや長丁場への言及もあった。

「チョークトークという形式に不慣れで自分の発表はもう少し工夫が必要だと痛感しましたが、皆さんの発表が内容・方法ともに充実されていてとても勉強になりました。全員分聞けて嬉しかったです。」(アーティスト)
「1日目のトークのトータル時間が長くてしんどかったです。内容はとてもよかったのですが。」(哲学研究者)
「書きながら話すことが思ったよりも大変でしたが意識してない部分を、あとから振り返って感じることができ、恥ずかしい気持ちもありつつ気づきとなりました。」(アーティスト)

また、発表を通じて得られた視点の変化についての記述もみられた。

「みなさんの話を聞いていて研究内容や制作についてなどはもちろんですが、考え方や生き方など研究者・作家としての人物像を少し垣間見れたのがよかったと思います。長丁場ではありましたが、一人一人の話を全員が聞けた点はとても重要だと感じました。」(アーティスト)

改善提案として、事前の各科学者の研究内容の把握、チョークトークパネルの制作時間の確保、質疑の形式に関する意見が寄せられた。


3-b-iv. DAY2 他者を介した交流

79%が満足した一方、「普通」16%・「やや不満」5%と、他プログラムに比べてやや評価が分かれた。

哲学研究者をモデレーターとする構造の効果を評価する声が多くあった。

「ちゃんと話を理解して、仲介してくれる第三者がいることで、こんなに話がしやすくなるものかと感心しました。とてもよかったです。」(科学者)
「興味のある分野について詳しい哲学者の方にモデレートしていただいたこともあり、科学と美術の立場から共通項を探りつつ、これまで目を向けなかった内容に踏み込めたように思います。」(アーティスト)
「求めている方向性が異分野で実は重なる部分が多いという手応えは確かに得られたように思います。」(哲学研究者)

一方で、登壇機会が限られた参加者やオーディエンスを意識してしまうという課題も浮かび上がった。

「島1−2の話し手に組み込まれないことで2日目の充実度は大きく違ってしまうと感じました。機会がなく、残念でした。」(アーティスト)
「観客を背にしてチョークトークのパネルの方を3者が向くほうが気にせずできたと思いました。」(アーティスト)
「哲学者による進行はありがたかったです。最初の10分の作戦会議は重要でした。」(科学者)

哲学研究者自身がより深く語る場を求める声も複数あった。

「常に一歩引いた立場でモデレーションに徹してくださったおかげで、場がとてもスムーズに流れましたが、現象学の立場からのご意見ももっとお聞きしてみたかったです。」(アーティスト)
「哲学者自身が研究を語る時間があっても良いと思った。」(科学者)

3-b-v. DAY2 1対1の交流

82%が満足した。最も個人的な対話が生まれた時間として評価が高く、具体的な協働イメージにつながった事例も複数みられた。

「私の交流の場合は、お互いにすごく具体的な話ができてとてもよかったです。こんなことができるかもしれない、こんなアイデアはどうだろうかといった内容を一緒に考れたのはとても有意義でした。」(アーティスト)
「一人一人とゆっくりじっくりお話ができる時間だったので芸術家の方の作品の理解を深くする事ができました。」(科学者)
「1対1なので、互いの興味関心について話すことができたが以外と40分が短く、盛り上がって来たところで終了となってしまうのでせめてあと20分ほど長いとよかったです。」(アーティスト)

「普通」「やや不満」の声には、対話の糸口をつかむまでに時間を要したこと、科学者とアーティストの比率の非対称性を指摘する声があった。

「アーティストと研究者の比率は考えてもいいかもしれない。」(科学者)
「1対1だと話が合い始めるととても良いのですが、お互いの共通点が掴みにくいとだらだらと続いてしまう感じはしました。」(科学者)

3-b-vi. 自由交流

74%が満足。プログラム中に話しきれなかった相手と話す機会として機能した一方、流動性の少なさや時間の短さへの言及があった。

「自由交流は流動性は少なく、もう少し話したかった方全員と話すのは難しかったです。」(アーティスト)
「なんならもう少し自由交流時間が多くあっても良いかもとすら思いました。」(アーティスト)

自由交流をプログラムの最後ではなく別のタイミングに置く提案も複数あった。

「プログラムの中間での自由交流という位置付けもありなのかなと感じました。それによって後半のプログラムにもいい影響があるかもしれません。」(アーティスト)
「話のきっかけづくり、最後ではなく最初に回してもいいかもしれません。」(哲学研究者)

3-b-vii. 一般公開(現地)

YCAMのオープンな空間設計を活かした一般公開については、来場者との接点を肯定的に評価する声が多かった。

「山口県在住の方や、YCAMに出入りしている方に結構話しかけられて思いもよらぬ交流があり、めちゃくちゃ楽しかったです。遠目にこのバザールがどう見えているのかいきなり鳥瞰するような感覚になりました。」(アーティスト)
「地元の方と交流できたのはよかったです。YCAMでの開催は地域住民の交流の場となっていることもあり、たまたま訪れる人たちも居たと思うのでとてもよかったと思います。」(科学者)
「直接の関わりはなかったが、あの空間で高校生などが勉強している光景がアートや科学に普段触れないそうにも少なからず影響を与えていそうなのがよかったです。」(アーティスト)

一方で、来場者の目線を意識することで内部の対話に制約を感じるという指摘もあった。

「来場者に向けた話をしなければと気を遣ってしまった面はありましたが、大学生が聞きに来てくれている、など分かり嬉しかった点もありました。」(科学者)
「一般の方の目線が入るのはとても大事ですが、どうしても萎縮されてしまうところがあるようです。アイスブレイクなどがあってもよいかもしれません。」(哲学研究者)

知人や学生が訪れたが、プログラムの趣旨の理解が難しかったという報告もあった。


3-b-viii. パートナー候補の組み合わせ

78%が満足。

「まさに興味のある分野について合致するパートナー候補であったと思います。」(アーティスト)
「パートナーの方の表現の手法と、僕の研究内容の相性が良く、良い組み合わせでした。」(科学者)
「的確だなと感じています。」(アーティスト)

アンケートの選択肢に収まらない希望や、実際に話してみて初めてわかることの多さを指摘する声もあった。

「実際にお話を伺うと、どの方の研究も非常に興味深く、そうした意味では誤解がありそうな言い方ですが『どんな研究の方でもよい』という感想を持ちました。そうした視点から、アートとの関わりに対する考え方や、対話の相性といったコミュニケーションの要素が結果的に検討材料として大きなものになりました。」(アーティスト)
「美術作家と研究者との間で、よほど具体的なビジョンが共有できなければ、パートナー形成は難しいだろうという印象を受けた。」(科学者)

パートナー希望を第2希望までしか選べない設計について、第3希望まで記入できるとよかったという声も複数あった。


3-c. オンライン一般公開の結果


3-c-i. アクセス数・視聴数

オンライン一般公開期間(9/8〜9/30)のオフィシャルサイト表示回数は、公開初日の9月8日前後にピーク(約400回/日)を記録した後、各リアルタイムプログラム実施日(9/20・9/27頃)に再度増加する推移を示した。2025年を通じた1日あたりの平均表示回数と比較しても、公開期間中は明確な増加がみられた。

YouTubeの再生数も9月8日の公開初日に最大(約160回/日)を記録し、各ゆるラジオ配信日(9/21・9/28)に再び増加が確認された。ゆるラジオvol.01は102回、vol.02は125回の視聴があった。


3-c-ii. 参加ファンダメンタルズからのふりかえり

オンライン一般公開終了後、参加科学者・アーティストを対象にふりかえりを実施した。

ポジティブな成果

「単に動画の限定公開だけでなく、参加者の皆さんの活動をオンタイムで外部と共有できる機会になってよかった。」
「他のアーティストや科学者と直接対話や交流をすることで、日頃の制作では言語化を意識していなかったことも言葉にしていくことがあり(また他の方の言語化された話を聞くことができ)、刺激的です。」
「今まであまり話す機会がなかった他ユニットの方と話すことで、自身の創作に関わる貴重な気付きが得られた。違うコミュニティと繋がれた。」
「自身の活動を外へ公開していくことを考えるきっかけになったと思う。」

miroへの書き込みに対して参加者同士が応答し合い、バザールでの対話が想起されるコメントも複数あった。


課題

外部参加者の少なさが最も多く言及された。

「外部参加者が少なかったのは事前の宣伝がうまくできなかったからだと思う。」
「初見の方がZoomに飛び込んでくるのはハードルが高いのかもなと思いました。段階を踏んだり参加者のニーズに寄って参加方法を変えてみるなどすると入りやすくなるような気もします。」

プログラムの多さと参加者の分散についても指摘があった。

「回数が多かったため、参加者が分散してしまったかも。」
「たくさんあって把握しきれてなかった。少ない方が周知はしやすいかも。」

miroというツール自体のハードルについても複数の言及があった。

「面白い試みだが、最初はわかりにくかった。アプリに慣れていないと結構難しいかも。ハードルがある。書かれた内容を見るのは面白い。」
「書いてもらう、ということのハードルが思った以上に高かったか。」

また、否定的なコメントへの不安や、匿名書き込みの設計についての検討を求める声もあった。


4. 課題

バザール当日については参加者の満足度は高く、特にDAY1のチョークトーク形式は全員が満足し、異分野間の相互理解を促す有効な形式として機能した。一方、以下の点について次回以降の検討が必要である。

  • スケジュールの設計:2日間の密度が高く、体力的な負荷が複数から指摘された。休憩・余白の時間の配分やプログラムのトリミングを検討する余地がある。

  • 他者を介した交流の機会の均等化:DAY2の「他者を介した交流(島1〜2)」への登壇は6セッション6名のアーティストに限られ、参加できなかったアーティストから充実度の差が生まれたという声があった。登壇機会の設計や、観覧側の体験の充実が課題となる。

  • 座席・空間設計と一般来場者の関係:来場者を意識することで対話が制約されるという声と、来場者との交流が有意義だったという声の両方があった。一般に開く姿勢は継続しつつ、参加者が内部の対話に集中できる空間設計を合わせて検討する必要がある。

  • 哲学研究者の役割の拡張:哲学研究者自身の研究を語る時間を求める声が複数あった。モデレーターとしての機能に加え、哲学研究者自身がより深く対話に参加できるプログラム設計を検討したい。

  • オンライン一般公開の設計:プログラムの多さによる参加者の分散、miroというツールの習熟ハードルが課題として挙がった。一般からの参加を増やすためには、事前の告知設計・参加方法の段階化・プログラム数の絞り込みを検討する必要がある。参加者数が少ないと空間が閑散として見えるという指摘もあり、規模と密度の適切なバランスの設定が求められる。また、まとまった文章で趣旨を説明するコンテンツの充実も有効と考えられる。


5. 参考リンク

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